一般的に大規模修繕は次のように進めます。
大規模修繕は、多大な費用と時間を要する、管理組合にとっては一大イベントであるといえます。全ての場面で、難しい判断と手数のかかる作業が必要ですが、やはりポイントになるのは「発意・体制づくり」と「パートナーの選定」「施工会社の選定」になります。
■発意・体制づくり
管理組合の役員だけでの対応は大変であり、また事業が複数年度にまたがるため、継続性が必要になります。そこで理事会の諮問機関として「修繕委員会」を設けたり「拡大理事会」を組織するなどして、役員以外の区分所有者に参画してもらいます。
そして、次に述べるパートナーとの協力により、建物の調査診断を経て、おおまかな大規模修繕の範囲や概算の費用を算出し、資金計画を定めます。それに基づいて、理事会や総会で基本計画を決定します。
■パートナーの選定
次に、大規模修繕には専門的知識と判断が必要であり、専門家であるパートナーの協力が不可欠になります。したがって、計画を進めていく上で、どのようなパートナーを選定するかということが大事なポイントになります。
通常大規模修繕の進め方には、「設計監理方式」(注1)「責任施行方式」(注2)「管理会社主導方式」(注3)の三つがあり、それぞれ設計事務所、施工会社、管理会社がパートナーになります。
それぞれの方式が成り立つための条件が備わっていればどの方式でもよいでしょうが、一般的には、第三者が公正な立場でパートナーを務める「設計監理方式」が品質、コスト、対応の柔軟性などの点で望ましい結果を得られるといわれています。
パートナーの役割についてはこちらを参照してください。
■施工会社の選定
一般的には元請となる建設会社に一括して工事を発注しますが、コストや透明性を重視する場合には、分離発注方式やCM方式も有力な方法です。
具体的な選定にあたっては、かなりの手間と時間がかかりますが、複数の会社から見積を徴収して内容を検討し、管理組合がもっとも適当と認めた会社を選定する「見積合わせ方式」がよい結果を生むでしょう。
詳細は施工会社の選定のページを参照ください。
(注1)設計監理方式
管理組合の発意の後、通常は設計事務所などをコンサルタントとして選び、工事前には建物診断、修繕設計、施工会社選定協力などの業務を依頼し、工事の段階では監理(工事が設計どおりになされているか、計画どおりに進んでいるか、などのチェック)を委託するものです。設計と施工が分離しているため、同一の基準で業者選定を行えるとともに、第三者の立場で工事をチェックするので、管理組合にとって安心して進められる方式です。
設計費や工事監理費が別途かかりますが、品質の確保や工事費の低減が期待できるため、トータルでは充分に見合うものといえます。
(注2)「責任施行方式」
信用できる施工会社数社を選定し、調査診断、修繕計画と設計、工事費見積を依頼し、その中の1社を選んで工事も発注する方式であるが、第三者によるチェックがないため、結果的に費用がかさんだり、仕様どおりの工事がなされない場合がある。
(注3)「管理会社主導方式」
大規模修繕業務の各段階で、管理会社が事実上のコンサルタントとしての役割を果たすものである。管理業者は建物の日常的な維持管理業務を担当している関係上、建物の弱点や問題点を知悉している事が多く、また修繕完了後の管理を担当する上からも、大規模修繕を主導するの適任であると言える。
ただし、管理業者に任せきるのではなく、必要なところには第三者のチェックを入れ、競争により施工会社を選定するなど、管理組合の自主性の発揮や客観的で合理的な進め方を心がける必要がある。